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ラダーは今も日本の工場の「共通語」――JEMA調査で見る、PLC言語の8〜9割がラダーという現実

制御盤の前でノートPCを使ってPLCを確認する保全エンジニア

AIやPython、ST(構造化テキスト)といった新しい話題が増えるなかで、「ラダーはもう古いのでは」と感じている方もいるかもしれません。

しかし、日本の工場の制御の現場では、今もラダー図(LD)が主役です。この記事では、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)が2025年3月に公表した「2024年度 PLC(プログラマブルコントローラ)ユーザ調査 報告書」の数字をもとに、ラダーがどれだけ使われているか、そしてなぜ今もラダーを読み書きできる力が重要なのかを整理します。

PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、工場の機械や生産ラインを動かすための専用のコンピュータです。日本では「シーケンサ」とも呼ばれます。ラダー図(ラダー)は、PLC に機械の動かし方を教えるためのプログラミング言語の一つです。電気回路図に似た見た目で、左右の縦線の間に横線が並ぶ形がはしご(ladder)に見えることから、この名前が付きました。

この記事に出てくる言葉

言葉意味
PLC(シーケンサ)工場の機械や生産ラインを動かす専用のコンピュータ
ラダー図(LD)PLC のプログラミング言語の一つ。電気回路図に似た見た目で、日本の工場で最も使われている
FBD(ファンクションブロック図)計算や処理のまとまりを箱(ブロック)で表し、線でつないで書く言語
ST(構造化テキスト)C言語のように文字で書く言語。計算や繰り返しの処理が書きやすい
SFC(シーケンシャルファンクションチャート)工程の順番を流れ図のように書く言語
IEC 61131-3PLC のプログラミング言語を定めた国際規格。上の4つの言語などを定めている
装置メーカー工場で使う機械や制御盤を作って納める会社。報告書では「セットメーカ」と呼ばれている
工場機械を使って自社の製品を作る会社。報告書では「エンドユーザ」と呼ばれている

調査の概要

項目内容
実施一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)
調査時期2024年8月〜10月(郵送法)
対象全国の機械工場の名簿から選んだ、工場で使う機械や制御盤を作る会社(この記事では「装置メーカー」)と、その機械を使って製品を作る会社(この記事では「工場」)
集計対象装置メーカー165事業所、工場57事業所(計222事業所。調査票を送った先のうち回答があった割合は12.4%)

回答した事業所の8〜9割がラダーを主に使っている

報告書では、PLC の言語の国際規格(IEC 61131-3)を取り入れている事業所と、取り入れていない事業所に分けて、主に使っている言語を聞いています。1つの事業所が複数の言語を答えられるため、合計は100%を超えます。

回答した側国際規格ラダー(LD)FBDSTSFC
装置メーカー取り入れている88.9%37.8%28.9%―
装置メーカー取り入れていない92.1%―――
工場取り入れている81.0%42.9%23.8%23.8%
工場取り入れていない93.8%―――

※「―」は報告書の本文に数値の記載がないもの。

機械を作る装置メーカーでも、機械を使う工場でも、ラダーを主な言語に挙げた事業所は8割から9割を超えています。

もう一つ注目したいのは、国際規格(IEC 61131-3)がまだあまり知られていないことです。規格を「知っている」「概略は知っている」と答えた事業所は、装置メーカーで37.8%、工場で36.4%でした。「導入の予定はない」はどちらも5割を超えています(装置メーカー54.7%、工場55.6%)。規格を取り入れていない事業所では、ラダーの比率はさらに高くなります。

FBD・STは「置き換え」ではなく「併用」で伸びている

規格を取り入れている装置メーカーでは、前回(2022年度)の調査と比べて FBD と ST の使用率がそれぞれ10ポイント前後増えました。工場でも FBD と ST が増えています。

ただし、同じ事業所でラダーの比率は8〜9割のままです。数字から読み取れるのは、ラダーを ST や FBD に置き換える動きではなく、ラダーを土台にして、計算や繰り返し処理など ST の方が書きやすい部分を足していく使い方です。

三菱電機の PLC のプログラムを作るソフト「GX Works3」も、ラダー・ST・FBD/LD・SFC を1つのプロジェクトの中で組み合わせて使えます。アルチテックの現場でも、安全のための条件(インターロック。たとえば「扉が開いていたら機械を動かさない」)や機械への指令はラダー、数値計算やデータ整形は ST、という分担が一般的です。

なぜラダーが今も重要なのか

1. 設備は10年、20年と動き続ける

報告書では、PLC に「故障せずに動き続けてほしい」と考える期間を「10年以上」と答えた事業所が、装置メーカーで約94%、工場で94.5%でした。工場に PLC の更新時期の目安を聞くと、最も多い回答は「故障するまで使用する」(39.2%)です。

つまり、今日ラダーで書かれた制御は、10年以上先まで誰かが保守し続けることになります。新しい言語がどれだけ広まっても、すでに工場で動いている膨大なラダーのプログラムは残り続けます。

2. 工場が重視するのは「保守しやすさ」

工場が PLC を選ぶ条件では、「信頼性」(44.4%)、「実績」(40.7%)に続いて「保守の容易性」(37.0%)が上位に入り、前回調査から12.3ポイント増えました。

ラダーは電気回路図に近い形をしているため、設備の点検や修理をする保全担当者が、パソコンの画面でスイッチやセンサーの ON/OFF を見ながら「どの条件がそろわずに止まっているのか」を追いかけられます。ライン停止の原因を現場で突き止めるとき、この読みやすさが大きな意味を持ちます。

3. 作る人と保守する人が違う

工場で動いている PLC のプログラムを作っているのは、「機械装置メーカ」が58.2%、「自社内」が32.3%でした。装置メーカーが作ったプログラムを、工場が引き継いで長く使うケースが多いということです。作った人以外が読めることが、ラダーが共通語であり続ける理由の一つだと私たちは考えています。

「ラダーが書ける」と「保守できるラダーが書ける」は違う

ラダーは入門しやすい言語ですが、実際の装置の制御では次のような点で差が出ます。

  • PLC の中の入出力やメモリの番号(デバイス。X・Y・M・D など)の割り振りを、後から追加・変更しやすい形で設計できているか
  • 非常停止・インターロック(安全のための条件)・異常が起きたときの処理が、通常の動作と分けて読める構成になっているか
  • コメントや構成を、自分以外の保全担当者が読める形で残しているか
  • 古い PLC(A シリーズ・Q シリーズなど)から新しい機種へ移行するとき、命令やデバイスの違いを正しく置き換えられるか

報告書でも、装置メーカーが挙げた PLC の異常の原因として「プログラミングミス」が28.8%ありました。動けばよいプログラムと、10年間保守し続けられるプログラムの間には、設計の差があります。

アルチテックができること

アルチテックは、三菱電機の PLC(GX Works3)を中心とした制御プログラムの設計・開発と、C#/.NET による業務システムの開発を行っています。

  • 既存のラダープログラムの解析・改修
  • 古い PLC から新しい機種への更新(プログラムの移行を含む)
  • PLC のデータを集めて画面や帳票にする、C#/.NET システムとの連携

「既存のラダーを読める人がいない」「設備を更新したいが、プログラムの中身が分からない」といったご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。

また、PLC 制御を学びたい学生の方向けに、現役エンジニアがマンツーマンで指導するインターンシップ(PLC 制御コース)も行っています。

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出典

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