AIやPython、ST(構造化テキスト)といった新しい話題が増えるなかで、「ラダーはもう古いのでは」と感じている方もいるかもしれません。
しかし、日本の工場の制御の現場では、今もラダー図(LD)が主役です。この記事では、一般社団法人 日本電機工業会(JEMA)が2025年3月に公表した「2024年度 PLC(プログラマブルコントローラ)ユーザ調査 報告書」の数字をもとに、ラダーがどれだけ使われているか、そしてなぜ今もラダーを読み書きできる力が重要なのかを整理します。
PLC(プログラマブルロジックコントローラ)は、工場の機械や生産ラインを動かすための専用のコンピュータです。日本では「シーケンサ」とも呼ばれます。ラダー図(ラダー)は、PLC に機械の動かし方を教えるためのプログラミング言語の一つです。電気回路図に似た見た目で、左右の縦線の間に横線が並ぶ形がはしご(ladder)に見えることから、この名前が付きました。
この記事に出てくる言葉
| 言葉 | 意味 |
|---|---|
| PLC(シーケンサ) | 工場の機械や生産ラインを動かす専用のコンピュータ |
| ラダー図(LD) | PLC のプログラミング言語の一つ。電気回路図に似た見た目で、日本の工場で最も使われている |
| FBD(ファンクションブロック図) | 計算や処理のまとまりを箱(ブロック)で表し、線でつないで書く言語 |
| ST(構造化テキスト) | C言語のように文字で書く言語。計算や繰り返しの処理が書きやすい |
| SFC(シーケンシャルファンクションチャート) | 工程の順番を流れ図のように書く言語 |
| IEC 61131-3 | PLC のプログラミング言語を定めた国際規格。上の4つの言語などを定めている |
| 装置メーカー | 工場で使う機械や制御盤を作って納める会社。報告書では「セットメーカ」と呼ばれている |
| 工場 | 機械を使って自社の製品を作る会社。報告書では「エンドユーザ」と呼ばれている |
調査の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 実施 | 一般社団法人 日本電機工業会(JEMA) |
| 調査時期 | 2024年8月〜10月(郵送法) |
| 対象 | 全国の機械工場の名簿から選んだ、工場で使う機械や制御盤を作る会社(この記事では「装置メーカー」)と、その機械を使って製品を作る会社(この記事では「工場」) |
| 集計対象 | 装置メーカー165事業所、工場57事業所(計222事業所。調査票を送った先のうち回答があった割合は12.4%) |
回答した事業所の8〜9割がラダーを主に使っている
報告書では、PLC の言語の国際規格(IEC 61131-3)を取り入れている事業所と、取り入れていない事業所に分けて、主に使っている言語を聞いています。1つの事業所が複数の言語を答えられるため、合計は100%を超えます。
| 回答した側 | 国際規格 | ラダー(LD) | FBD | ST | SFC |
|---|---|---|---|---|---|
| 装置メーカー | 取り入れている | 88.9% | 37.8% | 28.9% | ― |
| 装置メーカー | 取り入れていない | 92.1% | ― | ― | ― |
| 工場 | 取り入れている | 81.0% | 42.9% | 23.8% | 23.8% |
| 工場 | 取り入れていない | 93.8% | ― | ― | ― |
※「―」は報告書の本文に数値の記載がないもの。
機械を作る装置メーカーでも、機械を使う工場でも、ラダーを主な言語に挙げた事業所は8割から9割を超えています。
もう一つ注目したいのは、国際規格(IEC 61131-3)がまだあまり知られていないことです。規格を「知っている」「概略は知っている」と答えた事業所は、装置メーカーで37.8%、工場で36.4%でした。「導入の予定はない」はどちらも5割を超えています(装置メーカー54.7%、工場55.6%)。規格を取り入れていない事業所では、ラダーの比率はさらに高くなります。
FBD・STは「置き換え」ではなく「併用」で伸びている
規格を取り入れている装置メーカーでは、前回(2022年度)の調査と比べて FBD と ST の使用率がそれぞれ10ポイント前後増えました。工場でも FBD と ST が増えています。
ただし、同じ事業所でラダーの比率は8〜9割のままです。数字から読み取れるのは、ラダーを ST や FBD に置き換える動きではなく、ラダーを土台にして、計算や繰り返し処理など ST の方が書きやすい部分を足していく使い方です。
三菱電機の PLC のプログラムを作るソフト「GX Works3」も、ラダー・ST・FBD/LD・SFC を1つのプロジェクトの中で組み合わせて使えます。アルチテックの現場でも、安全のための条件(インターロック。たとえば「扉が開いていたら機械を動かさない」)や機械への指令はラダー、数値計算やデータ整形は ST、という分担が一般的です。
なぜラダーが今も重要なのか
1. 設備は10年、20年と動き続ける
報告書では、PLC に「故障せずに動き続けてほしい」と考える期間を「10年以上」と答えた事業所が、装置メーカーで約94%、工場で94.5%でした。工場に PLC の更新時期の目安を聞くと、最も多い回答は「故障するまで使用する」(39.2%)です。
つまり、今日ラダーで書かれた制御は、10年以上先まで誰かが保守し続けることになります。新しい言語がどれだけ広まっても、すでに工場で動いている膨大なラダーのプログラムは残り続けます。
2. 工場が重視するのは「保守しやすさ」
工場が PLC を選ぶ条件では、「信頼性」(44.4%)、「実績」(40.7%)に続いて「保守の容易性」(37.0%)が上位に入り、前回調査から12.3ポイント増えました。
ラダーは電気回路図に近い形をしているため、設備の点検や修理をする保全担当者が、パソコンの画面でスイッチやセンサーの ON/OFF を見ながら「どの条件がそろわずに止まっているのか」を追いかけられます。ライン停止の原因を現場で突き止めるとき、この読みやすさが大きな意味を持ちます。
3. 作る人と保守する人が違う
工場で動いている PLC のプログラムを作っているのは、「機械装置メーカ」が58.2%、「自社内」が32.3%でした。装置メーカーが作ったプログラムを、工場が引き継いで長く使うケースが多いということです。作った人以外が読めることが、ラダーが共通語であり続ける理由の一つだと私たちは考えています。
「ラダーが書ける」と「保守できるラダーが書ける」は違う
ラダーは入門しやすい言語ですが、実際の装置の制御では次のような点で差が出ます。
- PLC の中の入出力やメモリの番号(デバイス。X・Y・M・D など)の割り振りを、後から追加・変更しやすい形で設計できているか
- 非常停止・インターロック(安全のための条件)・異常が起きたときの処理が、通常の動作と分けて読める構成になっているか
- コメントや構成を、自分以外の保全担当者が読める形で残しているか
- 古い PLC(A シリーズ・Q シリーズなど)から新しい機種へ移行するとき、命令やデバイスの違いを正しく置き換えられるか
報告書でも、装置メーカーが挙げた PLC の異常の原因として「プログラミングミス」が28.8%ありました。動けばよいプログラムと、10年間保守し続けられるプログラムの間には、設計の差があります。
アルチテックができること
アルチテックは、三菱電機の PLC(GX Works3)を中心とした制御プログラムの設計・開発と、C#/.NET による業務システムの開発を行っています。
- 既存のラダープログラムの解析・改修
- 古い PLC から新しい機種への更新(プログラムの移行を含む)
- PLC のデータを集めて画面や帳票にする、C#/.NET システムとの連携
「既存のラダーを読める人がいない」「設備を更新したいが、プログラムの中身が分からない」といったご相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。
また、PLC 制御を学びたい学生の方向けに、現役エンジニアがマンツーマンで指導するインターンシップ(PLC 制御コース)も行っています。
出典
- 一般社団法人 日本電機工業会「2024年度 PLC(プログラマブルコントローラ)ユーザ調査 報告書」(2025年3月)

